特別展「エッシャーを発見した男：サミュエル・メスキータ」

エッシャー美術館にて、2023年2/18 – 10/1　開催　

2023年の今年は、M.C.エッシャー(1898-1972)生誕125周年にあたります。エッシャーの世界最大のコレクションを有するクンストミュージアム・デン・ハーグとエッシャー美術館では大規模な回顧展を開催し、この特別な年をお祝いします。彼の芸術家としての成功は、メンターであり友人でもあったサミュエル・メスキータ(1868-1944)の功績が大きかったと言われています。特別展「エッシャーを発見した男：サミュエル・メスキータ」では、エッシャーの作品とともに、感動的なメスキータの作品も展示しています。特別展開始後の最初の2週間だけで14,000人もの入館者があり、これは、2002年にエッシャー美術館がオープンして以来の記録的な数字となり、この記念イヤーの素晴らしい幕開けとなりました。

メスキータは素晴らしいアーティスト、そして、版画家だっただけでなく、グラフィック技術を教える教師でした。ハーレムの建築装飾技術の学校で、若かりし頃のエッシャーは教師としてその学校で教鞭をとっていたメスキータと出会ったのです。エッシャーは当初、両親の影響で建築を専攻していましたが、メスキータが彼の初期の作品を目にすると、グラッフィックアートに転向するよう勧めました。それ以降、二人は師弟の枠を超えて生涯の友となったのです。

エッシャーは優秀な生徒で、メスキータのスタイルや主題をよく研究していました。メスキータは人物や動物を強い線で描写することにより、対象物の本質に焦点を当てました。彼がアムステルダムのアルティス動物園の動物をモチーフに制作した版画は個性に溢れていました。メスキータはエッシャーの芸術性の基礎を作ったと言っても過言ではありません。エッシャーが卒業して、さまざまなスタイルを確立していった後も、メスキータはエッシャーの芸術家としてのキャリアを誇らしく見守りました。

メスキータはポルトガル系ユダヤ人だったため、第二次世界大戦下のオランダで、ナチスドイツによるユダヤ人弾圧により危機的な状況に面しました。1944年1月31日、メスキータは妻、息子のヤープとともに逮捕され強制収容所に移送され、それぞれ、アウシュビッツとテレシンシュタッドのユダヤ人収容所で命を落としました。エッシャーは接収された、かつての師の自宅とスタジオからできるだけ多くのメスキータの作品を持ち出し、彼のこの機転により、主要なメスキータコレクションを後世に残すことが出来ました。エッシャーは自分のメンターの名誉をその死後も守り抜くことが出来たのです。 メスキータはM.C.エッシャーを発見した男として知られていますが、この特別展ではそれ以上のことを伝えています。彼自身もパワフルなアーティストで類まれな版画作品を制作しています。エッシャー美術館では、この天才的な二人のアーティストの作品を同時に展示することにより、かつての師匠であったメスキータとエッシャーとの再会を果たしているのです。